前回に引き続き、パリが誇る初期ゴシック教会の傑作、ノートルダム大聖堂について、その見どころと建築工法上の特徴をお話ししていきたいと思います。
バラ窓は絶好の撮影ポイント!
聖堂にはたくさんのステンドグラスが使われていますが、撮影ポイントとしては、やはりバラ窓がおすすめです。バラ窓というのは、花びらの形をしたステンドグラスのことです。
北・南・西の3ヶ所にありますが、制作当時のまま残っているのは北側だけ。他のものは19世紀に大幅に修復されています。ただし、写真に撮るとなると光との兼ね合いもありますから、被写体としては南側のものが一番かもしれません。大きさは、南北のバラ窓が直径13m。西は9.6mです。
塔に登ってみよう!
聖堂内の見学とは違って、こちらは有料となりますが、塔に登ってパリの市街やセーヌの流れを一望することも可能です(8.50ユーロ、18歳未満は無料)。
一度外に出て、正面入口の左脇の方から入りなおします。狭くて暗い、しかも急なラセン階段を登ること386段。テラスになった屋上には、伝説上の怪獣シメールたちが待っています。英語風にキメラ、あるいはキマイラと言った方が分かりやすいでしょうか。
「なぜ教会に怪獣?」と思ってしまいますが、基本的には魔よけとして置かれているようです。もちろん、雨どいとして実用的に使われているものもありますが。
なお、さらに上まで行ってみたいのであれば、南塔の最上部まで登れます。南塔といえば、大聖堂に4つある鐘楼のうち、一番大きい13トンの鐘があるのが南塔です。この鐘、実は名前まで付いていて、エマニュエルというそうです。
ノートルダムの鐘
大聖堂の鐘にまつわる話として有名なのが、ヴィクトル・ユゴーの名作『ノートルダム・ド・パリ』(邦題は「ノートルダムのせむし男」)ではないでしょうか。
いやむしろ、それをアニメ映画化した、ディズニーの『ノートルダムの鐘』の方が有名かもしれませんね。醜い鐘つき男のカジドモと、美しい踊り子のエスメラルダ。その二人の恋愛模様を描いた作品です。
余談ですが……。「カトリックの国なのだから、教会は大切に扱われたのだろう」などとは考えないでください。実際、フランス革命後は、ノートルダム大聖堂でさえ荒れるに任せる状態でした。そんな中、大聖堂修復へと動く切っ掛けとなったのが、このユゴーの作品だったと言われています。19世紀中頃の話ですね。
補足:柱だけでは支えられない!
前回、「ゴシック様式になって、重い石の天井を柱で支えられるようになった」と書きましたが、実はそれは正確ではありません。
天井から下へと垂直にかかる力に対しては、細い柱でも耐えることはできるのですが、実は屋根や天井からかかる力は、壁を外側へと押し倒す方向にも働いています。
そこで、その解決策として考え出されたのが「フライング・バットレス」、飛梁(とびばり)というものです。上の写真ではちょっと分かりにくいかもしれませんが、外側から壁を支えるようにアーチ状の梁が渡されていますね。それがフライング・バットレスです。
高くて幅の広い窓。美しく輝くステンドグラスの数々は、そんな工夫の上に、まさに支えられているというわけです。
(以上)