マドリッド近郊への旅。第2回目はスペイン最古の大学町サラマンカ、特にその旧市街をご紹介したいと思います。
サラマンカについて
マドリッドから北西へ約200km。鉄道を使っても3時間弱ということで、マドリッド近郊というには距離がありますが、歴史的建造物が数多く残る、とても魅力的な町であることだけは間違いありません。実際、サラマンカ旧市街は1988年に世界遺産にも登録されています。
サラマンカの歴史
町の歴史は古く、紀元前3世紀にはもう栄えていたようですが、ローマ時代以降も、北のアストルガ(銀の産出地)と南のメリダを結ぶ「銀の道」の中継地だったこともあり、交易の中心地として大いに賑わいました。
ただし、現在の町の基礎ができたのは、1085年にアルフォンソ6世がモーロ人の手からこの地を奪回してからのことです。実のところ、国土回復戦争によって、サラマンカ周辺は荒地同然になっていたのです。
サラマンカはまた、金色の町(La Ciudad Dorada)とも形容されます。この町の建物には、たいてい黄褐色の砂岩が使われているからです。
町の中心「マヨール広場」
旧市街の中心はマヨール広場です。サラマンカ駅からは約1.5km。ここから南のトルメス川に向ってぶらぶらと歩けば、目ぼしい観光スポットはほぼ見られます。直線距離にして800mといったところでしょうか。
さて、このマヨール広場、スペインで一番美しいと評判です。広場の周囲は4階建ての建物で囲まれており、しかも1階のアーケードになった部分には商店まで入っています。午前中は閑散としていますが、宵っ張りの多い大学町のこと、夜になると賑わいます。
ちなみに、この広場の建設が始まったのは、1729年のことでした。しかもブルボン家のフェリペ5世からの贈り物だったとか・・・。スペイン継承戦争で、オーストリアのハプスブルク家ではなく、フランスのブルボン家を応援してくれたことへのお礼というわけです。
トゥナ (Tuna)
スペインの伝統音楽といえば、フラメンコ・・・とは限りません。あえて言えば、フラメンコはスペイン南部アンダルシア地方が中心の音楽。ここサラマンカの辺りでは、トゥナと覚えてください。
トゥナというのは、そもそもは学生の楽団のこと。サラマンカ発祥とも言われており、宴会はもちろん、結婚式などでも演奏されることがあるようです。
上の動画はマヨール広場で撮影されたものですが、見てのとおり、伴奏はギターとマンドリンが中心。ちょうちん袖の上着とタイツ姿が定番の服装です。
サラマンカ大学正門
マヨール広場から南に歩くこと400mほど。銀細工を思わせる精巧な彫刻が壁一面に施された建物が見えてきます。サラマンカ大学正門入口です。
サラマンカ大学の設立は1218年。ボローニャ大学、オクスフォード大学、パリ大学と並び称されるほどの歴史を持つ名門大学です(あのコロンブスも、ここで天文学を学んだとか)。もちろん、今でも世界から多くの留学生をやって来ています。
図書室をはじめ、歴史的価値のある部分が一部公開されていますので、ぜひ見学してみてください。
どうして壁にホタテ貝なのか?
マヨール広場からサラマンカ大学の正門へと向かう途中に、ちょっと変わった建物があります。壁一面に約400個のホタテ貝が刻まれているのです。
今は図書館として利用されているこの建物、「貝の家」と呼ばれていますが、実はサンティアーゴ騎士団に所属していた貴族の館だったそうです(建築は1438年)。
もちろんホタテ貝が大好物・・・というわけではなくて、サンティアーゴ巡礼の象徴がホタテ貝であり、その巡礼者を守るのが彼ら騎士団の任務だったことに基づいています。
新旧の大聖堂とローマ橋
サラマンカ大学のそばには、12世紀のロマネスク様式の旧大聖堂と、16~18世紀にかけて建築されたゴシック様式がベースの新大聖堂が建っています。貴重は美術品を見学がてら、新大聖堂の屋上にもぜひ上ってみてください。サラマンカの旧市街が見渡せます。
散策の最後は、やっぱりトルメス川に架かるローマ橋です。アーチの数は26個。町側の15個はローマ時代からのものと言われます。橋を渡った対岸は撮影ポイントとしても絶好ですので、写真愛好家の方には、ぜひとも足を運んでもらえればと思います。
最後に
旧市街は、全体をぐるっと一周しても4kmにも満たないほどの地域です。短時間で見て回ることもできますが、夜間のライトアップもありますし、込み合う時間にマヨール広場やバールにでも行って、地元の雰囲気に浸るのも悪くはありません。
むしろ、スペイン最古の大学町なのですから、大学生気分に戻って、のんびりとした旅を楽しむというのはいかがでしょうか。