昔ながらのドイツの街並みをイメージした時、すぐに思い浮かぶものといえば、やはり木骨組みの建物ではないでしょうか。一見すると日本の木造家屋にも似ていますが、はたして実際はどうなのか。少しばかり解説してみたいと思います。
箱を積み重ねたような構造体
結論から言ってしまうと、ドイツなどに見られる木骨組みの建物と日本の木造家屋とは似て非なるもの。特に2つの点で大きく異なります。一つ目は、建物全体の構造です。
日本の場合は、基礎の上に柱と梁で、まずはしっかりとした構造体を作り上げるのが、家づくりの基本ですね。2階建ての場合であっても、1階と2階は同じ柱で支えられています。
ところがドイツの木骨組みでは、その点が違います。言ってみれば、1階という箱の上に、2階部分の箱を載せていくという感じで造られています。ですから日本で言うところの「通し柱」なるものはありません。
日本人からすると、「それで地震の横揺れに耐えられるんだろうか」と心配になるところですが、ドイツでは地震の心配がほとんどないので、その点は気にならないようです。
上階が出っ張った建物も可能
箱のような構造体を載せていくわけですから、1階よりも2階、2階よりも3階が出っ張った家屋も普通のこと。実際に観光していると、結構目にするのではないでしょうか。
また、上階部分の重みを支えるという観点から、1階部分が石造りという場合もあったりします。もちろん、調理場や仕事場のある1階を石造りにすることで、火災を予防できるというメリットもあるわけです。
強化された漆喰壁
もう一つの大きな違いは、壁の中身です。漆喰が塗ってあるので、一見するだけではわかりませんが、実はあの中には、レンガや切石、木の枝などがぎっしりと詰め込まれているのです(少なくとも中世の末期頃にはそれが普通だったようです)。
日本の木造家屋とは違い、頑丈な壁で家の重みを支えていかなければならないわけですから、当然といえば当然のことですね。その点でいえば、ロマネスク様式の教会が、重い屋根をささえるために分厚い壁を必要としたのと、事情がよく似ています。
それならむしろ最初から、木骨組みではなく石造りの家を建てればいいじゃないか。そんな疑問も出て来ますね。実際、ヨーロッパでも南の方へ行けば、石造りの家が普通ですし……。
でも、ドイツ人はそうしなかった。というか、ありていに言えば、それができなかったんですね(建材として使える石が豊富になかったからです)。だからこそそれに代わるものとして、通常の木造家屋と石造家屋の中間とも言うべき、木骨造りの家を採用したわけです。
(以上)