石造りのキノコのような家
南イタリアへの旅行といえば、やっぱりナポリを中心とした西海岸が人気かと思いますが、東海岸にも見るべき場所はたくさんあります。その一つが、今回紹介するアルベルベッロ(Alberobello)です。
円筒形をした壁にとんがり屋根が載った姿は、まるで石造りのキノコのよう。メルヘンの世界に迷い込んだような風情さえ感じます。アルベルベッロの町には、こんな建物が1400軒ほども残っているのです。
アルベルベッロという名前、ちょっと変かもしれませんが、イタリア語でアルベロ(albero)は「木」、ベッロ(bello)は「美しい」という意味ですから、合わせると「美しい木」という意味になります。
場所は、東海岸の中心都市バーリから南東に60kmほど行ったところ。長靴のたとえを持ち出せば、かかとのちょっと上辺りに位置します(バーリから私鉄に乗って約1時間半)。
トゥルッリって、何でできてるの?
このとんがり屋根の建物は、普通、トゥルッリ(trulli)と呼ばれています。写真ではわかりにくいかもしれませんが、1コ1コは円筒形をしており、それがいくつか連なって、一軒の家になっています。
もちろん石造りで、近くで取れる石灰岩を利用しています。採れたての石灰岩自体は明るい黄色なのですが、年月を経るにしたがって、だんだん黒っぽくなって行きます。壁には漆喰が塗られていますが、屋根は薄く割った石をただ重ねただけの、いわゆる空積(からづみ)です。
なお、壁の上塗りに使われている塗料はペンキではありません。石灰を溶いて作った「石灰乳」というものです。外壁を白く塗るのには、魔よけの意味も込められているそうです。
壁の部分は内壁と外壁の二重構造になっていますから(間には土や小石を詰める)、夏は涼しく、冬は暖かですし、夏の渇水対策として、雨水を地下の貯水槽に溜め込む仕組みまで設けられています。
家の中の様子を見せてくれる土産物店も結構ありますので、内部の様子が知りたければ、買物がてら見学させてもらいましょう。
コレって、何の印?
トゥルッリを見ていて気になるのが、やっぱり屋根に描かれた印ですが、これには一体どういった意味があるのでしょうか。
「魚とか鳥をシンボル化したもの」といったように、ある程度意味を理解できるものもありますが、意味不明のものも多いようです。日本で言えば「家紋」と同じで、その家に代々受け継がれてきた「家の印」とのことです。
最後に
アルベロベッロの駅を出て10分も歩けば、トゥルッリが密集した地区ですので、ココにしかないものを見たいという方は、ぜひ一度訪ねてみてください。メルヘンの世界を散策しているような、ちょっと変わった気分が味わえるはずです。
※トゥルッリは、1996年に世界遺産に登録されています。