ミュンヘン近郊へも足を延ばしてみたいという方、特にルートヴィヒ2世に興味がある方におすすめなのがキーム湖です。ドイツ・アルプス街道沿いの湖とあって景色も良好。鉄道を利用しても1時間ほどで行けますから、日帰りでも無理なく楽しめます。
バイエルン州最大の湖「キーム湖」
ミュンヘンから南東に約90km。以前紹介したベルヒテスガーデンからであれば、ドイツ・アルプス街道をミュンヘン方向に約50km戻ったところにあるのがキーム湖 Chiemsee です。
湖の面積は82平方kmといいますから、日本でいえば、宍道湖や屈斜路湖と同程度。浜名湖の1.2倍といったところでしょうか。ドイツ・アルプスが背景に控えているだけに景色もよく、特に北側部分は人気のリゾート地となっています。
ミュンヘンから鉄道を利用するのであれば、ザルツブルク方面行きの列車に乗って、まずは西岸のプリーン Prien で下車。そこで支線に乗り換えれば、湖畔の船着場近くまでたどり着けます。
女子修道院のあるフラウエンキームゼー島
見どころは、湖に浮かぶ2つの島。フラウエンキームゼー島 Frauenchiemsee とヘレンキームゼー島 Herrenchiemsee です。
フラウエンキームゼー島は本当に小さな島ですが、その中にあるのが、8世紀後半の創建と伝えられている聖母マリア女子修道院です。外観は11世紀のロマネスク様式ですが、内部は17世紀のバロック様式となっています。
夢の跡「ヘレンキームゼー城」へ!
船着場から見える大きな島がヘレンキームゼー島です。ドイツ語でヘレン Herren といえば、通常「男性」の意味合いで用いられますが、ここではそうではなく、修道士会の男子会員のことを指しています。実はこの島には、19世紀まで男子修道院があったのです。
修道院がなくなった後、島は業者に買取られて乱開発されてしまいますが、それを見かねて、自然保護の観点からさらに買取ったのが、あのルートヴィヒ2世でした(1873)。
もちろんそれで止めておけばよかったのですが、城造りが大好きな彼のこと。この島にヴェルサイユ宮殿を真似た庭園と宮殿を建て始めます(1878)。そしてその夢の跡が、未完に終わったヘレンキームゼー城というわけです。
ルートヴィヒ2世が亡くなるのは1886年のことですが、その当時までに完成していたのが、王の寝室とヴェルサイユ宮殿の「鏡の間」を模倣した大広間でした。他の部分とは違って、見るからに豪華なのはそのためです。
余談ですが……
参考までに紹介しておくと、王室もバイエルン政府も財政危機に瀕する中、あえて造られたあのノイシュヴァンシュタイン城の建築費は約620万マルクと言われています(今の金額に直すと250億円相当といったところでしょうか)。
あれでも結構豪華だと思うのですが、ヘレンキームゼー城の見積は、なんとその上をいく2000万マルクだったとのこと。いやぁ、その浪費たるや、凄まじいばかりです。
(以上)