バイエルン州の州都ミュンヘンから南に下ること約80km。オーストリアとの国境に位置するのがミッテンヴァルトです。今ではバイオリン作りの町として有名ですが、かつては市場町として栄えたこともありました。その歴史と町の見どころについて、お話ししたいと思います。
今や人気のリゾート地
ミッテンヴァルト Mittenwald という地名。日本語に直訳すると「森の真ん中」という意味になりますが、まさにその言葉の通り、森と山に囲まれた田舎町。それが多くの人が抱く、この町の第一印象ではないでしょうか。
とは言え最近では、夏はハイキング、冬はスキーの拠点となっており、小さい町ながらも人気のリゾート地として知られています。
なお、町は南北に走る鉄道路線の西側に広がっていますが、まずは何と言っても印象的なのが、反対の東側に聳え立つ、カーヴェンデル Karwendel(2385m)の威容です。いやがうえにも、アルプスのすぐ近くまで来たことを実感させられます。
ローマ時代からの宿場町
ミッテンヴァルトには街道が通っていたこともあり、ローマの時代から宿場町として存在していましたが、この町には転機が二度訪れます。
一度目は1487年のことでした。東方からの渡来品を売りさばいて巨利を得ていたヴェネツィアの商人たちと、ドイツ人たちとの取引がこの町で行われることになったのです。
普通の田舎町が、一夜にして国際的な商業都市に大変身。各地から商人が集まって来るは、取引品の保管や運搬といった仕事まで生まれるはで、町は大繁栄しました。
ところが良いことは長くは続かないようで、1679年には、取引の場がイタリアのボルツァーノに移されてしまいます。今まであった仕事が突然なくなり、町には閑古鳥が鳴く始末。ミッテンヴァルトの町は一気に斜陽へと向かいました。
バイオリン作りの町として再生!
そんな時に訪れたのが第二の転機です。1684年のこと、一人の人物がイタリアから帰って来ました。それがバイオリン職人のマティアス・クロッツです。
彼はイタリアのクレモナで修業を積み、しっかりとした技術を身に付けていただけでなく、それを後進の指導にも活かしました。その甲斐あって、町はバイオリン作りの町として再生。今でも良い弦楽器を作る町として、高い評価を得ています。
ゲーテも賞賛した壁画の数々
この町を散策していて面白いのは、家の外壁にいろんな絵が描かれていることです。動物や植物はもちろん、歌ったり踊ったりしている人たちまで描かれていますから、見ているだけでもきっと楽しくなるはずです。
イタリア旅行の途次、この町で一泊した文豪ゲーテもこれには感激したようで、「生きている絵本のようだ町だ」と書き残しています。
カーヴェンデルに登ろう!
気候の良い季節であれば、カーヴェンデルに登るのも悪くはありません。登るとは言っても、ロープウエイがありますから、それで一気に上まで行っちゃいましょうという話です。
実際、頂上は2385mですが、その近くの2244mまでなら楽に登れます。特に夏の場合であれば、さして準備をしなくても大丈夫ですので、ぜひとも絶景を堪能してください(もちろん、夏といえども油断は禁物ですが)。
(以上)