ヨーロッパへの観光旅行ともなると、教会見学を無視するわけにもいきません。教会には絵画や彫刻などの傑作が数多く展示されていますし、そもそも建物自体が一つの芸術作品とも言えるからです。
とは言え、教会やキリスト教についての知識があるかないかで、教会見学の面白さが違ってくるのは当然です。そこで今回から何回かにわたって、「これだけは知っておいて欲しい」という教会見学のための基礎知識をご紹介していきたいと思います。
土地の名前を付けた教会?
日本では建物や何かの施設に名前を付ける場合、土地の名前を付けることがよくありますね。東京大学なんていうのは、その際たるものでしょうし、病院はもちろん、企業名にも土地の名前はよく使われます。
では、ヨーロッパの教会についてはどうでしょうか? フランスのちょうど真ん中あたり、ブールジュという町には、「ブールジュ大聖堂」という世界遺産があります。
まさに土地の名前が教会の名前になっているわけですが……、実はこれは正式な名前ではありません。正確に言えば、Cathédrale Saint-Etienne de Bourges(ブールジュのサンテティエンヌ大聖堂)が正式名です。
あえて、もう少しわかりやすい日本語にすると、「ブールジュにある聖エティエンヌ大聖堂」となります(フランス語では、サンテティエンヌと一語にして発音します)。
また、南ドイツの小さな村には「ヴィース巡礼教会」という、こちらも世界遺産になっている教会がありますが、これなどもヴィースという村にある教会だからヴィースになっているのかと思いきや、実は「ヴィースにある鞭打たれるキリストのための巡礼教会」が正式名です。
重要なのは「誰に捧げる教会なのか」ということ!
勘の良い方はもうおわかりかとも思いますが、要するに、その教会を誰に捧げるのか。そこが教会の名前を決める際の、一番大切なポイントとなっています。聖エティエンヌに捧げるから「聖エティエンヌ大聖堂」、鞭打たれるキリストに捧げるから「鞭打たれるキリストのための巡礼教会」というわけです。
また、その延長で言えば、「聖十字架教会」は聖十字架に捧げられた教会ということになりますが……、もちろんこれは、十字架によって象徴されるキリスト教の理念に捧げられた教会、という意味ですね。
花の聖母マリア大聖堂とは?
では、イタリアのフィレンツェにある「花の聖母マリア大聖堂」だとどうなるでしょうか。答えは簡単。花の聖母マリアに捧げられた教会ということです。ただ問題は「花の」の部分にあります。
実は聖母マリア教会って、ものすごい数あるんですね。だから、それぞれの教会を区別できないと困ってしまう。そこで何がしかの修飾文句を付けるわけです。
ちなみに言えば、最初に紹介したサンテティエンヌ大聖堂では、正式名に「ブールジュの」というのが付いていました。あれも考えてみれば、区別のための修飾文句というわけです。
(以上)