バレンシアの町のお祭りというだけでなく、今やスペインの3大祭りの一つにも数えられているのが「ファリャの火祭り」です。一体どんなお祭りなのか、紹介してみたいと思います。
聖ヨセフに捧げられたお祭り
ファリャというのは、地名ではありません。スペイン第3の都市バレンシアで、毎年3月中旬に行われている火祭り。それがファリャ las Fallas と呼ばれているものです。
聖ヨセフという名前を聞いたことがあるでしょうか? そうです。聖母マリアの夫だった人物ですね(スペイン語圏では一般にサン・ホセ San Jóse と呼ばれていますが)。
実はこの人に捧げられたお祭りが、ファリャの火祭りなのです。期間は毎年3月12日から19日までの8日間。一番盛り上がるのは、もちろん「聖ヨセフの日」でもある最終日です。
ちなみに、火祭りの起源は中世まで遡れます。ヨセフの職業は大工だったということもあり、彼は大工さんたちの守護聖人でもあるのですが、いつの頃からか当地では、聖ヨセフの日になると、大工さんたちが木のおもちゃと鉋屑(かんなくず)を持ち寄り、それで焚き火をすることが慣わしとなっていました。
ヨセフが木のおもちゃを作って、それを幼いキリストに与えていた。そんな言い伝えが残っていたことから、「聖ヨセフのご加護があらんことを」という祈りとともに、木のおもちゃが燃やされたようです。
時代は下り、おもちゃはいつしか人形へと代わり、一般の人も参加して広く行われるようになった。つまりはそれが、バレンシア名物の「ファリャの火祭り」というわけです。
町を彩るファリャの人形たち
火祭りの中心となるのは、もちろん色鮮やかな人形たちです。各地域ごとに用意される人形の数は、全部でなんと300以上。高さも20mほどになりますから、近くで見ると、かなりの迫力です。
各地区で作るといっても、もちろん製作するのはプロの職人さんたちです。美しいだけではダメ。見ていても楽しく、それでいて風刺の効いたものが要求されるそうです。
ちなみに中身は空洞で、木の枠と紙だけで作られていますが、それでもいざ製作期間は少なくとも半年は必要です。しかも、残念なことにと言うべきか。精魂を傾けて作った人形は最終日に燃やされてしまいます(ほんの15分ほどで!)。
人形を燃やすことで、町から悪霊を追い払う。そんな願いを込めてではありますが……。
ただし、市民の投票で一番人気の高かった1体だけは、その年の優秀作として保存されることになっています。ファリャ芸術家博物館 Museo del Artista Fallero に行けば見られますので、バレンシア観光の際には、是非とも訪ねてみてください。
なお、火祭りの人形自体もファリャと呼ばれています。語源はラテン語で松明(たいまつ)を意味するファクーラとのことですから、「なるほど」という感じではないでしょうか。
(以上)